日本の英会話スクールで半分のシェアを誇っているとされたNOVA(統括本部=大阪市)が26日未明、大阪地裁に会社更生法の適用を申請した。受理された昨日から、全国に約800ある教室は休校。その後の報道を見る限り、再開される見通しは暗そうだ。
NOVAには今年の三月まで、六年間通っていただけに感慨がある。大学の卒業旅行で生まれて初めて海外旅行をした。それ以来、「いつか英語を話せるようになる」という宿題を長い間放置してきた。会社の業績が低迷し、万一の際に少しでも有利になれば……という気持ちが動機付けになって、約50万円を捻出した。夫婦で始めたので100万円。
日本語がまったく話せないネイティブスピーカーと英語だけで会話するというスタイルは、初心者にはとっつきにくい。このスタイルにはかなり批判もあったが、僕にはあっていたようで、それなりに楽しく、充実していた。なにしろピーク時には全国で50万人の受講生を抱えていたというから、これに比例して批判が多いのもやむを得ないと思われた。
企業体としてのNOVAが未成熟で危うい体質を持っていることは、いろいろな報道に触れなくてもクラスに通うたびに感じていた。まず気づいたのは、方針がころころ変わること。特にキャンペーンに関する告知などは、一週間後にまったく違うことを言われたりした。
最初の三年が終了し、更新するかどうか迷った。英会話のスキルがまだ自分がめざす水準に達していなかったこと、子どもにお金がかかるようになれば今後通うのは難しくなると考えたこと、それ以上に通っていて楽しかったことが決め手となった。その頃はまだ、NOVAの内部に活気があった。授業をもっとよくしていこうというスタッフの意気込みを感じた。
しかし、拡大路線で現場のスタッフが疲弊しているのは明らかだった。一人の講師が三〜四の教室をハシゴするのは当たり前という感じになった。顔見知りの講師の授業になると、「今日はあそことここに行ったからここにきた」という愚痴を聞くのが日課のようになった。僕は六年間で五つの教室を転々とした。レベルアップすると、小さな教室ではそのレベルの授業を提供していなかったから、転校せざるを得なかったのだ。どんな小さな教室でも、教室の数は六から八はあった。しかし、常駐講師は二、三名だったので、予約がとれない状況でも、常に教室はガラガラだった。
受付の日本人スタッフの質も、失礼ながら低下していったように思われた。給料の不払いにもかかわらず最後まで頑張っていたスタッフに鞭打つようなことは書きたくはないが、有能なスタッフは数ヶ月で移動していった。ぼくが在籍していた今年の春には、三名の日本人スタッフの誰も外国人と英語でコミュニケーションできないようだった。
僕よりずっとハングリー精神が旺盛な家内は、「高い月謝のもとをとる」と英語スキルの向上に励み、英語関係のアルバイトをいくつかこなした。子ども向け英語教室のサポート要員、別の英会話スクールのウェブサイト運営の手伝い、在宅での英文校正……など。いろんなところで「元NOVA講師」と顔をあわせたという。なにしろ、現在日本に滞在している欧米人の半分近くが英会話講師だといわれる。そのマーケットでNOVAは50%のシェアを持っていた。となると、旅行者を除く欧米人の四人に一人がNOVA講師という机上の計算が成り立つ。
その誰もが、口を極めて元の職場を批判していた。
今回のNOVAの経営破たんは、“戦後もっとも債権者が多い未曾有の事件”と言われているそうだ。三十万人とも四十万人ともいわれる受講者が前払いした受講料は255億円。金融機関や未払い給与に比べ返済の優先順位は低く、全額返還は困難な状況だという。
さらにNOVAは、英会話スクールで組織している団体にも加盟していないので、同業者による救済措置も得られにくいという。教室で親しくなった人が何人もいる。「あと三年がんばって通訳の資格取るわ」と言って別れた人の顔を思い出す。
今年の春、受講を継続しなかった最大の理由は、コロコロ変わる方針を伝えるスタッフへの不信感だった。一方では、この夏から給料が支払われなかったにもかかわらず、頑張ってきた現場スタッフも多い。中には、自腹で受講料を払って生徒数の減少に歯止めをかけようといた人もいるという。
だけど、現場でできることにはおのずと限界があるのだ。
今回の“事件”で一番強く思ったのは、自分の職場のことも含めて、そのことだった。


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- 2007/10/27(土) 22:23:59|
- 職場のこと
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企業の
危機管理体制を揺るがす事件が新聞紙上を賑わせている。しかし、新聞・TVが報じない危機も間違いなく存在する。うちの職場の場合、それは英語の
電話。いったんこれがあると、わが社はたちまちサイバーテロ真っ青の機能マヒを引き起こしてしまう(だって、50代以上はメールもインターネットもほとんどやらないからサイバーテロが起きようもない。この前、課長が作成したワープロ文書のフロッピーが読めなかった時「サイバーテロだ」とのたまっていたが……)。
社内で多少でも
英会話の心得がある数名(恐ろしいことに僕もその中に入っている)に、営業から総務、関連グループの社員まで
電話を回してくる。一応、海外担当部門という1人だけのセクションはあるのだが、そこの人間は英語は堪能でも仕事はあまり堪能でなく、しかも性格的にかなり問題がある(「いま、忙しいんだけど[ウソつけ])、そのぐらい自分でできないの?[できたらお前なんかに頼まない(怒)]」(常に余計な一言が多い)ので、社内の人間は極力その担当者には回したくない。そこでこちらに回ってくるのだが、全社の各部門の業務内容など把握しているわけもなく、ろくな対応はできない(白状すると、これは語学力がないことも大きいんだけど)。
気の毒なのは
電話をかけてきた相手で、“just a minute”の一言すらなく
電話をたらい回しされ、高い国際
電話料金を浪費させられたうえ、やっと
電話口に出た相手に何を尋ねても満足な答えは得られないという目に逢う。国際的には実に感じわるい会社なのだ。
これではさすがにヤバイということになり(こっちも仕事にならないし)、必要最低限の会話マニュアルを作成し、各部門に配布した。マニュアルと言っても「
英会話ビジネスフレーズ集」から必要と思われるフレーズを抜き出しただけの簡単なものだ。
さて、マニュアルを配布したものの、こういう時に限って英語の
電話はかかってこない。緊張感があるうちにやる気のありそうな社内の若手にシミュレーションをさせてみることにした。
僕が指名したのは営業部の若手ワダ君。スーパーから転職してきた25歳。前職が客商売だったため、言葉使いはていねい。性格的にも素直で、僕にとってはいじりやすい後輩だった。
「
英会話に興味ある?」
「やってみたいと思ってたんです、実は通勤電車でMDとか聴いて勉強してます」
「よ〜〜〜し」
話はトントン拍子に進み、昼休みの空いてる時間にフレーズを読む練習をさせてみた。

そしてある日のこと。総務部からSOSの内線が入った。
「英語のお
電話なんですが……お願いできますか?」
ワダ君は自分の席で資料作成か何かをしている。
「ワダ君、英語の
電話です! よろしく!」
ワダ君の表情に緊張の色が浮かぶ。すがるような眼差しを無視し、僕は
電話を回す。彼が取る。真剣な眼差しで耳を傾けている。海外ドラマで覚えたという“uh-huh”を時折はさみ、何だかそれっぽい。(おお、意外といいかも)
そして……。
ひとあたり耳を傾けていたワダ君は、悲しそうな目で僕を見て「すいません。だめです」と言って静かに受話器を置いた。
こら〜〜〜〜!!!! せ、せめて
電話を回すとかしろよ〜〜(緊張のあまり力尽きたらしい)。
●画像:presented by Microsoft online clipart

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- 2007/10/10(水) 21:46:12|
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