2030年のタイムカプセル

つまらない大人にはなりたくない。

ボヘミアンたちのカクテルタイム 1.職場を定時で抜け出して


 金曜日。職場を5時ジャストに抜け出し、バーに駆けつける。客としてではない。週1回、バーテンダーとして地元のバーに行くのだ。この日ばかりはタイムカードのアラームが5時を指し示すのを頭の中でテンカウント数えて持つ。

 職場からバーまではきっかり1時間かかる。カフェタイムが終わり、6時からバータイムに切り替わる。既に何組からの常連が、僕がカウンターの中に入るのを持ってくれている。
 「常連」と言っても、この店には長いつきあいの客はほとんどいない。多くは1〜2カ月、長くても半年くらいで去っていく。ここはホスピスの近くにある末期がん患者とその家族のためにだけ作られたバーだからだ。決して長いとは言えない、残された時間を家族といっしょに、または一人で過ごすための空間だ。
 今の常連の中で一番古株のYさんからお約束のジンフィズの注文が入りバータイムがスタート。中学校の先生をしている彼女が「人生で唯一はめを外した」大学時代に良く飲んだカクテルだそうだ。今夜はご主人といっしょだ。時々Yさんはご主人を車椅子に乗せて来店するが、ほとんど目をつぶっている。眠っているように思えるが、Yさんによると「周りの声は聞こえている」そうだ。 中学の校長先生だったご主人もそうしているとまるで子供のようだ。
 ご主人にも「いらっしゃいませ」と声をかけ、酒棚に手を伸ばす。ブルーの瓶が女性客に人気の「ボンベイ・サファイア」を選び、レモンジュース、ティースプーン一杯のガムシロップといっしょにシェイカーに放り込み、僕は静かに振り始める。


ジンフィズ

●ジンフィズ
 ドライジン45ml レモンジュース15ml シュガーシロップ2tsp ソーダ適量


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  1. 2007/08/15(水) 17:00:34|
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  1. 2007/09/08(土) 03:09:56 |